< 出生後休業支援給付、育児時短就業給付の創設 >
近年、共働き家庭の増加に伴い、仕事と育児の両立を支援する政策の重要性が高まっています。特に、子の出生後の親の負担軽減や、柔軟な働き方の促進が求められていました。この背景のもと、令和7年4月1日から「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が新設されました。
同時に、育児休業給付金の支給対象期間延長手続きの変更も行われています。
今回は、それぞれの制度の要件、申請手続きについて、重要な点に絞って説明します。
1 出生後休業支援給付金
(1)概要
「出生後休業支援給付金」は、両親がともに育児休業を取得しやすくすることを目的に新設された給付金です。この制度により、一定の要件を満たす育児休業を取得することで、育児休業給付金に加えて上乗せの給付を受けることができます。
特に、父親の育児参加を促進し、育児を夫婦で分担しながら取り組める環境を整えることが狙いとされています。共働き世帯が増える中、育児と仕事を両立しやすくするための重要な支援制度となります。
(2)支給要件
被保険者(雇用保険の一般被保険者及び高年齢被保険者)が、次の@およびAの要件を満たした場合に支給されます。
@被保険者が、対象期間に、同一の子について、出生
時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または
育児休業給付金が支給される育児休業を通算して
14日以上取得したこと。
A被保険者の配偶者が、「子の出生日または出産予定
日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定
日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の
翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業
を取得したこと、または、子の出生日の翌日におい
て「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当
していること。
(3)支給申請手続
出生後休業支援給付金の支給申請は、原則として、出生時
育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請と併せて、
同一の支給申請書を用いて行います。
(4)支給額
支給額=休業開始時賃金日額×休業期間の日数×13%
2 育児時短就業給付金
(1)概要
「育児時短就業給付金」は、仕事と育児の両立支援の観点から、育児中の柔軟な働き方として時短勤務制度を選択しやすくすることを目的とし、2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して働く場合に、賃金の低下を補填するために新設された給付金です。
(2)支給要件
育児時短就業給付金を受給するには、次の@とAの両方の要件を満たす必要があります。
@2歳未満の子を養育するために育児時短就業する雇
用保険の一般被保険者または高年齢被保険者である
こと。
A育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて
育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就
業開始日前2年間に、被保険者期間が12か月ある
こと。
この要件に加え、次のB〜Eの要件をすべて満たす
月について支給されます。
B初日から末日まで続けて、雇用保険の被保険者であ
る月
C1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期
間がある月
D初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休
業給付を受給していない月
E高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月
(3)支給額・支給率
原則として、育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額が支給されます。ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます。
また、各月に支払われた賃金額と支給額の合計が支給限度額を超える場合は、超えた部分が減額されます。
そのほかに、支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業前の賃金水準と比べて低下していないときなど、一定事由に該当するときは支給されません。
(4)支給対象期間
育児時短就業を開始した月から、育児時短就業を終了した月までの各歴月について支給されます。
支給対象期間は、育児時短就業に係る子が2歳に達する日の前日など、一定の終了事由に該当した日の属する月までとなります。
(5)申請手続きの注意点
申請手続きを行う際は、次の点に注意が必要です。
@育児時短就業給付金の支給を受けるためには、原
則として、被保険者を雇用している事業主が育児
時短就業開始時賃金の届出、受給資格確認及び支
給申請を行う必要があります。
A支給申請は、原則として2か月ごとに行うことと
されていますが、被保険者が希望する場合は、被
保険者が自ら申請を行うことや、1か月ごとに支
給申請を行うことも可能です。
3 育児休業給付金の支給対象期間延長手続き変更
(1)変更の背景
育児休業給付金は、保育所等に入れなかったため育児休業を延長した場合に、1歳6か月に達する日前まで(再延長で2歳に達する日前まで)支給を受けることができます。しかし、育児休業及び給付金の延長を目的として、保育所等の利用の意思がないにもかかわらず市区町村に入所を申し込む事例も発生していました。これは制度趣旨に沿わない行為であり、制度を適切に運用するため、変更が行われました。
(2)変更点
育児休業給付金の支給期間延長手続きの際は、保育所等の利用申込書の写しが必要となります。
市区町村に保育所等の利用申し込みを行う際は、必ず申込書の写し等をとって保管しておくこととされています。
(3)延長申請時の提出書類
@育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
A市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったとき
の申込書の写し
B市区町村が発行する保育所等の利用が出来ない旨
の通知
(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)
(4)育児休業給付金の支給対象期間延長要件
次の@〜Bすべて満たす必要必要があります。
@あらかじめ市区町村に対して保育利用の申し込み
を行っていること。
A速やかな職場復帰のために保育所等における保育
の利用を希望しているものであると公共職業安定
所長が認めること。
B子が1歳に達する日の翌日時点で保育所等の利用
ができる見込みがないこと。
詳しい内容は、事務所だより6月号に掲載しておりますので、ご参照ください。
*その他「マイナンバーカードの健康保険証等利用に関するQ&A」「外国人雇用状況の届出」等についても取り上げています。
詳しい内容は今月号の長尾事務所だよりをご覧ください。
*税務関係では「税務面で備える 取引先にもしものことがあったら…」「毎月一定量購入する物品の経理処理」等についてのパンフレットを用意しました。
ご希望の方には差し上げます。
「長尾事務所だより6月号」、ご希望の方には郵送いたします。
ご相談・ご質問受け付けております。お気軽にご連絡ください。
(042-523-5678) |